「落とし物」の相?

 昼前に買い物に行った母が帰ってきて第一声。「パンを落とした〜!」 何事なのかと詳しく聞いてみれば、スーパーの中のパン屋さんで買ったパンを、レジの直前でトレイが傾いて落としてしまい、ビニールに入った3つのパンのうち1つが外に飛び出てしまったらしい。そりゃあ災難だったねぇ。
 買ってきたものを片づけながら、母は「コーヒー飲もう」とエスプレッソマシンを準備し始めた。綾戸は母とテーブルに背を向けて、ソファに埋もれて(ホントに埋もれるのだこのソファ。冬はぬくくて脱出しがたい)新聞を読んでいた。うぃぃぃぃぃぃぃ…とエスプレッソマシンの音。そして、コーヒーのいい香り。できあがったら一口もらおうと思っていたその瞬間。「ばしゅ!!」という音とほぼ同時に「ばきん!!!」という何かが割れる音。しかもかなりの轟音。思わずソファからびくん!と跳ね上がったくらいだった。振り返ると硬直する母と、茶色く汚れたエスプレッソマシン。「怪我してないか?」と父が駆け寄る。何事…? 眼鏡をかけてよく見れば、エスプレッソマシンのコーヒーを入れる部分が落ちて、下に置いていたマグカップが粉々になっていた。かなりかっちりと装着するものなのだが、圧力をかけているし、もしかしたらコーヒーが目詰まりしてそれで飛び出したのかもしれない。「コーヒーを入れる部分」と書いたが、金属製のかなり重たいものなので、そんなものがロケットスタートをかませば、そりゃあマグカップは粉々になるわけで。
 「落ちたパンを焼いて食べよう、だからコーヒーを淹れようと思ったのに〜…」と母はぶつぶつ片づけていた。災難が続くねぇ。結局コーヒーは普通に淹れ直し、落ちたパンも焼いて食べて、しばらく。ご飯の準備をする台所でまた「どかん!」という音。今度は大きな大根が床に落ちたんだって…。「ついてないのかい」と声をかけたら「あんたも運転気をつけて帰りなさいよ」って言われた。今日ついてないのは私じゃないも〜ん。