せつない気持ち

 古い写真を見て、何となく懐かしく思ったり、いろいろ思い出してしまったりすること。毎日顔を合わせていて毎日怒鳴ったり笑ったりするお子ちゃまたちだけど、去年の写真を見ても、ちょっとそんな気になる。これが古い写真だったり、好きだった人の写真だったりすると、さらにせつなさが増す。この感覚は理解してもらえると思うのだけど…。
 ちょうど、今、そんな気持ちなのだ。
 久しぶりに師匠を見たから。
 テレビの中の憧れだった人。中学校時代からずーっと憧れだった人。そんな人を追いかけて大学でクイズ研究会に入ったら、偶然が重なってその人に会うことができ、師匠と呼べるまでになった。(この偶然は、あの番組でも見せた師匠の「脅威の記憶力」のおかげなのだが…)
 13歳の頃から憧れ続けて早15年にもなる。人生の倍以上。物の考え方やとらえ方、見方。一本の固い筋が通っていて、それでいて普通の人とは違う厳しい(シビアな)見方。根気強く教えていただいたこともあり、私の物の見方や考え方の根底には師匠のものが強く流れていると思う。もちろん、そのままではないし(ありえないし)、ぜんぜん違う部分もあるけど。
 惚れていたのだと思う。大好きだった。
 師匠の隣にいたかった。
 それはかなわない事だし、それでいい。自分には、師匠の隣にいるだけのパワーも実力もないと思うから。そうやって、自分の中で諦めをつけていた。今は私にも大切な人がいて、師匠の隣に行きたいと思うことはない。それでも「諦め」が口実なのか事実なのか、時々分からなくなった。
 ある日、師匠からメールが来た折に、少し愚痴をもらしてしまった。師匠は愚痴が嫌いだと知っていたから、言いたくはなかったのだけれど。弱い人間は見放される。少々恐怖におびえながら、それでもかなりつらい時期だったので、少しだけ、こぼした。すると、弱いところなんて見せればいいじゃない、という意外な返事。
 「俺の妹みたいなものなんだから」
 ああ、完全にフラれたな、と思った。でも、うれしかった。妹みたいだと言ってもらえたこと。そして、そのことが悲しくなかったこと。13歳からの憧れが、ようやく一区切りついたこと。
 TVに映った師匠を見ながら、何となくそのことをかみしめていた。15年分の想い。13歳の頃から、ずいぶん遠くに来たね。いつもいつも、師匠に会うときは「胸を張って」が目標だったんだけど、こんな形で「次は絶対、胸を張って会える」と思えるとは。多分、今度会うときは、すっごい胸張って、今までの中で一番言い笑顔でありがとうって言える。

 あー、そうそう。「卒業」のきっかけを作ってくれたのは、だぁなんだからね。これからの責任は重いわよん♪