お別れの会

 朝から超特急で忙しかった。「1・2年生の先生は今日中に家庭訪問の予定を他の学年の先生に渡せ」と言われたが、今日中ってあんた…私は離任式があるから午後からいないんだが。大あわてで兄弟のいるクラスの先生に渡す付箋をメモしていた。すると、お姉さんから声をかけられた。「綾戸さん、今日あいさつ運動だから。行こ」「えっ!? …あ、はい!」わーすーれーてーたー。あいさつ運動から帰ってきて必死に付箋を仕上げ、お子ちゃま達にもかなり早めにあれこれ準備をさせておく。連絡帳とか早めに書かせないとさー。
 それでも昼掃除が終わってからは一息ついてから前の小学校に行くことが出来た。懐かしい道のり、懐かしい建物、懐かしい玄関。何だか味わいながら廊下を歩くと数人の保護者と、同じように離任された先生方。あいさつをして一緒に校長室に入る。近況を報告しあい、頃合いになったので体育館に行く。懐かしい顔ぶれが待っていた。体育館の入り口に立って、新しい6年生の方を見たとたん、ユーマの口が「あ〜!綾戸先生だ〜♪」と動いたのが見えた。もうそっちの方を見られなくて、うつむいて、そして正面だけ見て席まで歩く。式辞では、一人一人「この人はこんな先生で〜」と校長先生が言うのだけど…私、そんなに男っぽかったですか…。ビシビシ鍛えていたのは確かですが…。
 離任・退任する9人でステージに上がり、一言ずつ言葉を言っていく。式が長くなってきているので、お子ちゃま達はそろそろ飽きてきている(苦笑)私の番が来る。ちょっと本音をしゃべりすぎた。失敗。
 「最後に一つだけ、質問があります。」
 そういうと、さすがにお子ちゃま達がびっくりした。
 「この中で、私に怒られたことがある人。手を挙げて下さい」全校の2/3くらい。
 「じゃ、ほめられたことがある人」1/2強…かな。
 「まだまだ、怒られた人の方が多かったようですね。修行します」
 そう締めくくると、職員席から笑いが起きた。お子ちゃま達はちょっとポカンとしていた。
 泣くのはのは我慢できた。お子ちゃま達の間を通って出て行くときも、笑顔で手を振ることが出来た。よかった、と外に出たとたん。コーキのお母さんが、ものすごい大きな花かごを持って私に声をかけてきた。
 「これね、2年間お世話になったから。有志を募ってちょっとずつお金集めてね。
  先生に、プレゼント! うちのもすっごいお世話になったから!」
 とんでもない。あの子達に逆にどれだけ救われてきたんだろう。あの子達の成長ぶりに、どれだけ助けられてきただろう。保護者の皆さんに、どれだけ迷惑かけただろう。もう、涙が止まらなくなった。
 お子ちゃま達も帰る前に遊びに来てくれ、紙に一言書いてくれと言われてかなり書いた。いろいろ話もした。6年生大変だねぇ。頑張るんだよ。
 4時頃、職員室に「コーヒー入ったから飲んでいき〜」と言われてのこのこ行く。で・何で私は5時過ぎまでパソコンを直して仕事をしている…? 何度も「綾戸さん………何しよるん?」と苦笑いされた。「仕事してま〜す♪」
 6時からは、大人の送別会。毎年出ていく先生に、担当になった人が一言言ったり感謝状を贈ったりと暇がないけどそれなりの趣向を凝らす。私の担当は隣のクラスだったS先生と音楽の先生。替え歌を歌ってくれた。そのまま書けば、みんながどんな目で私を見てくれていたか、よく分かる。
 「私からあなたへ この歌を届けよう
 いつも子どもがびびっていたよ とてもこわい綾戸さん
  夢のあるあなたへ この歌を届けよう
 愛する人と幸せになったら 必ず知らせて下さい
  別れゆくあなたに この歌を届けよう
 寂しいときは帰っておいで たくさん仕事待ってるよ」
 最後のフレーズ、涙が出そうだったのに、オチで涙が引っ込んだばかりかよだれが吹き出そうになったわ…。 
 帰り際に、つい思わず「帰りたくないなぁ」と泣き出してしまった。帰ったら、もう本当にお別れで、本当にこの暖かい人達の側にはいられなくて、ここに来たら、もう私はお客で。一緒に涙目になりながら新しい学校のことを話してくれた(以前そこで務めてた)H先生。笑わせてくれたT先生。親身に話を聞いてくれたM先生。帰るのがイヤでイヤで、その場を車で離れても家に帰りたくなくて、一緒に乗せてきていた新任のF先生と「喫茶店でも行くか」とコーヒー1杯でかなり粘っていた。
 帰って、保護者の方からもらった花を飾る。「飾るところ無いかな」って心配もされちゃったし、自分もしてたけど、何とか置けました。ほんっとに大きいんだよ。これ。

 気分が悪くなりそうなピンぼけだけど、これは携帯のカメラのAFが完全にいかれてるので…。えー、どれだけ大きいかと言うと
テレビ、確かに大きいテレビじゃないけど、一応17インチのテレビデオなんですが。遠近感が狂うよ(笑) 部屋の中がお花のイイ香りで充満している。嬉しくて。
 お子ちゃま達からの手紙も読んだ。何だか、がんばれる気力がわいてきた。一緒にがんばろうねぇ。