ここはなんてあたたかくて

 音楽発表会の合奏曲をそろそろ決めておかねばならない。鍵盤ハーモニカだけでも夏休みの間に練習させておいて、備えておきたいからだ。歌はまあ9月からでも良いんだけど。で、転勤して全く様子の分からない状態なので、とりあえず「音楽発表会の曲って…」とお母ちゃんとお姉さんに聞いた所、「何でも良いよ」とのこと。…それって、丸投げされてますのこと? 発表会の様子も、毎年どんな曲をしているのかも、どんな楽器が使えるのかも、全く分かっていないのに? ぽかんとしていると「私らピアノも弾けないしー。前に立って怒って声を出させるだけはするからー」と追い打ちをかけられた。呆れてモノも言えん。それが数日前。
 結局、前の学校の音楽専科の先生に相談して(今の学校の専科の先生にも聞いたんだけど、「自分のこと(3年生以上の練習や成績付け)が手一杯で今何もしてあげられない。今度ね!」と言われた。夏休みに間に合わないってば)、今年2年生でやらせる同じ曲をすれば?簡単だよ〜、と教えてもらったので、コピーをもらいにのこのこと出かける。
 懐かしい玄関をくぐり、職員室のドアをノックしてドアを少し開けたとたん、よく相手をしてくれたH先生の顔が見えた。「あら〜♪元気〜?」とにっこりして下さるのがうれしい。音楽のA先生も待って下さっていた。あれこれ教えていただいている間に、懐かしい顔にたくさん会って、何だか実家に帰ってきたような気分になった。そのうちにコピーを取っていた事務室にわざわざ顔を出してしゃべりに来て下さった先生もいた。今の学校の状況とか、ここの状況とか、あれこれしゃべったり聞いたり。ここの状況は数年変わってないなぁ…と苦笑いもする。いつの間にか上がり込んで1時間以上経っていて、コピーももらってスコアも借りて、「合唱曲も探しておいてあげるよー」と言ってもらえた。ありがたい限り。おしゃべりに来てくれた先生も、「いつでもおいで〜。お話ししよう!」と暖かいお言葉。
 お気に入りの歌手篠原美也子さんの、お気に入りの歌。
ここはなんてあたたかくて 優しい人ばかりなのだろう
少しだけ眠ろう 慣れてしまえばきっとここも寒くなる
つかの間で はかなくて その記憶で生きていく
ここはなんてあたたかくて すべてを忘れてしまいそうで
今はただ眠ろう またいつの日か 風の日の街に出て行く
 私はもうここに本当に帰ってくることは出来ないけれど、それでも頑張ろうという活力になる場所。そういう雰囲気を作ってくれる優しい人たち。心配もしてくれてる。頑張らなければ。