放課後のお子ちゃま達

 音楽発表会の練習が少しずつ始まっている。今日はカスタネットとタンバリンのパートの子2人ずつを居残り特訓にする。初めての特訓だからまだ楽しそうだ。(大体が「休憩時間や放課後に特訓大会するけど、それでも『えー。ヤダー!』とか言わない人なら立候補しなさい」って言って、その上で立候補したのだからやる気はあるはず)30分ほど手をたたきながらリズムうちの練習をし、「手が痛い〜。真っ赤っか〜!」と悲鳴を上げながら帰っていった。
 20分後。夏休みの作品をコンクールに出すため、Mさんと一緒に近所の農協に出かける。車を出そうとすると、その近くで遊んでいるうちのクラスの女の子3人。
「何してるの?」
「お母さんごっこしてるのー」
「そっかー。誰がお母さん?」
「お母さんいない〜どっか行っちゃった」
『へ!?』(←Mさんと綾戸同時)
 要するにお母さん役の子はいるのだが、どこかにふらっと行ったまま帰ってこないらしい。家出? 残った3人がみんな「お姉さん」役だというのも笑ったのだが。車を出すと、走ってくる男の子2人。さっきまでカスタネットを特訓していたユータとナオヤ。笑って手を振りながら走ってくるのは可愛いんだけど、進路をふさぐな!轢くぞ!
 農協への道々、とろとろと歩く女の子の後ろ姿。あれ。うちのクラスのトモミじゃん…。ふーらふーらしながら、時々しゃがんで花など摘みながら帰っている。家までもう少しだけど、まだ時間かかりそうだなあ。「自分が子どもの頃って、やっぱりあんな風に帰ってたよね」と2人で笑いながら横を通り過ぎる。
 作品を出して帰ってきて、車を停めているとやっぱり「綾戸先生だ〜!!」とユータとナオヤが走ってきた。君たち…あれだけ特訓大会やっといて、まだ私に笑顔で寄ってくるかね(笑) もう少ししごいても大丈夫だな(爆)
 振り返るとさっきと同じ場所に、さっきと同じ3人組。まだお母さんは帰ってこないらしい。「ただいま〜」と声をかけると笑っていた。
「3人でお留守番してるのか、えらいな〜」
「うふふ〜♪」
「狼さんが来ても、ドア開けちゃダメよ〜」
 すると、普段は滅多に口をきかないアヤカが一言ぽつり。
「開けて戦う」
 一瞬、絶句。頼もしいお姉さんがいるぞー。