突然の敵

 夕方のこと。晩御飯を作り始めて30分くらい。あと一手間で1品出来上がるので、そこでストップ。旦那の帰りを待ってから仕上げることにして、片づけを始める。洗い物をしている間に揚げ物をした油を冷ましておいて、使い終わった油を瓶に片付ける。油入れを買ってないので、インスタントコーヒーが入っていた瓶を使っている。早3ヶ月(苦笑) いい加減油入れを買ってこないといけないかなあと思いながら瓶をいつもの位置に戻そうと持ち上げた。その瞬間。いい加減油がつきまくっていた瓶が手をすり抜けていき、床にがばーん!と落ちた。ふたも飛んで油が床に飛び散る。うぎゃああああああああああああああああ!!
 あまりに突然の敵の襲撃に10秒ほど立ち尽くしてしまい、その間にもトポトポと油が瓶から出ているのを見ていた。敵はさらに台所の床を侵食していく。副司令官綾戸としていつまでも呆然としているわけには行かないので、急いで作戦を立てる。幸い(?)なことに、総司令官旦那は明日日帰り出張なので今日の仕事が忙しく、まだ当分帰って来そうに無い。一瞬「帰りに新聞紙の束を会社からもらってきて!」とメールしようかと思ったが、そうすると失態が総司令にばれるのでその案は却下。総司令が帰る前に何とか敵の侵略から台所を奪い返し、失態の証拠隠滅をしておかなければならない。
 …で。新聞は無いので取り合えず雑巾と、すでに侵食されてしまっていたお手拭用タオルで、手近にあった敵を吸い取る。でもそれで用が足りるはずも無く。移動しようかと思ったが、気づけば足元をやられていて、つま先部分にべっとりと被害、移動能力まで奪われている。まず移動能力の確保からしなければならないが、綾戸の位置が台所の一番奥で、目の前には敵の軍団が2mに渡ってのさばっており、その向こうにある洗浄能力を持つ基地まではおよそ6mはある。回り道はあるが、被害を受けている足で行くとさらに被害が広がる恐れがある。仕方ない…。移動はしばらく我慢し、手の届く範囲で敵をできるだけ撃破することに。
 場所が台所なので、敵の弱点をつくことができるものはいくつかある。一番先に目に付いた武器『緑茶成分入りジョイ』を敵の上に撒く。これで少しは撃破しやすくなるはず。右翼に濡れ雑巾、左翼にバケツを配備して敵に挑む。何度も濡れ雑巾を洗いなおしながら、移動せずに届く範囲を一掃していくが、『ジョイ』の弱点は水に濡れると泡が出て余計に滑りやすくなること。何か無いか…と探しあぐねていて、ぴったりのものを見つけ出した。『レンジ周りもこれでスッキリ・デイリーピュア』オレンジ成分入りで油がすぐ切れるといううたい文句が心強い味方。しかもスプレータイプなので、攻撃範囲が広い。これで攻撃をしておいて、相手がひるんだところを雑巾で突撃する。
 ある程度戦況が楽になったが、やはり一度基地に行かないと、自分の足元からまた被害が広がる。中央突破しなければ…。思いついて、雑巾をもう一度しっかりしっかりと洗って、自分の足元に配備。雑巾の上に乗って、雑巾を滑らせてちまちまと進む。これで中央突破をしておいて、あとは被害の少ないかかとで歩いて基地まで急ぐ。ようやく基地に到着、座り込んでシャワーで足にまとわり着いていた敵をを洗い落とす。するうちに5時のサイレンが聞こえた。やばい。休んでいる暇は無い。急いで戦場に戻って戦いを続ける。
 しかし、ついに『デイリーピュア』が力尽きた。まだ敵は1/5ほど残っている。仕方なくもう一度『ジョイ』に応援を頼み、水拭き・から拭きを繰り返す。何度か味方の泡に転びかけたけど、何とか見える範囲の敵を取り除くことができた。時計を見れば6時前。敵の襲撃を受けた、買って来たばかりの酢の瓶ともらい物の入った紙袋を処理、ゴミ箱の横にも被害があったので拭いていると、横においていたそうめんの箱まで敵の手が及んでいた。あわてて箱を開けてみたら中身はビニールで無事だったので、外の紙だけ排除。なんとか一息つく。まだ時々こっそりと陰に伏兵がいたりしているし、タオルと雑巾1枚がご臨終で、着ていたTシャツが一晩つけおき洗いの重症だけれど、総司令の帰る前に処理することができました。
 …って、ここに書いたらばればれなんだけれどもねぇ(苦笑)