今朝の恐怖事件。

 まず背景から説明せねばなるまい。綾戸は現在足首に爆弾を抱えている。靱帯がゆるんでいるらしい。ふとした拍子にぴき!!っと痛くなる。座っていて足首を動かしたとき、階段を下りているとき…。それを抑えるためにいつも足首にサポーターをしている。今は冬なので、サポーター代わりのレッグウォーマー。でも見えると恥ずかしいので、今日は長〜いスカートをはく。ジャージを着る日ならいいんだけどね。くるぶしくらいまでの長いスカート。これでOK、と家を出る。
 今日は仕事帰りからお出かけの予定なので、右肩に学校用の鞄。左手にお出かけ鞄2つ、そして右手に家の鍵と車の鍵。あまりに荷物が多いので今日はゴミ捨てを諦めた。ローヒールの靴を履いてアパートの階段を下りる。
 3段下りたところで、4段目を踏み出そうと上げた右足が急に動かなくなった。体が傾く。焦ってもう一度足を引っ張る。何かに引っかかった感覚。しまった、スカートの裾部分にヒールが引っかかった!
 体はぐんぐん傾く。
 文章で長々と書いているが、一瞬の出来事。いやぁ、人間ってすごいよね。事故が起きたときって「時間が止まって見える」って言うけど、あれはホントだね。
 「あっ。やばい。ヒールが引っかかった!今日長いスカートはいて来ちゃったからなぁ止めておけばよかったかも。どうしよう右足出ない。この高さから落ちたらさすがに怪我もするだろうなあ。痛いよなぁ。それだけは絶対阻止しなければ…顔とか怪我してもヤだし。右足出れば間に合うんだけどうわぁどうしよう!!」
 ここまで考えられるんだもんねあの一瞬で。周りでその瞬間を見た人がいたら、ホントに一瞬だったと思うよ。「あっという間にぐらって倒れた」っていうのが感想だろうなあ。
 綾戸がいつもの癖で階段の右側に寄って歩いていたのが幸いだった。とっさの判断で右手に持った鍵を捨てて、右側にある柵をつかんだ。これで左しか空いてなかったらアパートの壁しかないからつかめなかったよ…。池田屋階段落ちだけはまぬがれた。それでも体の勢いは止まらず、柵をつかんだまま膝をついた状態に。階段の角で思いっきり両足のすねを激打した。「…っっっっった〜〜」とうめくのがようやく。でも落ちなくてよかった、と一息。半分階段からぶら下がったような体をようやく起こす。重たい荷物を離す頭はなかったらしい。きっちりとにぎっていた。必死で体勢を立て直して、ふと気づく。道路向かいを小学生が集団登校していく。う。あっち見たくないなぁ。
 ひざががくがくする。緊張してたのと興奮してたので動悸がおさまらない。必死でまた転ばないように階段を下りて、投げ捨てた鍵を拾いに行く。握力がなくなっていて、鍵を取り上げてもぽろっと落ちる。また階段を数段下りて駐車場に出て、車の中に荷物を入れる。ふるえが止まらない〜。
 ようやく臑に違和感を感じ始めたのは30分後。4回の教室に上がるのに足が痛い。ストッキング+レッグウォーマーの上から打っているのに、ストッキングにはくっきり白い線が入っていて、足は熱を持って腫れている。今頃痛くなるなんて交通事故みたい…。きっと明日にはかなり青あざになっていると思われる。やれやれ。