一瞬芸 パート2

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 一瞬芸…とは少し違うのだけど、一瞬の出来事に固まるオトナ達。
 綾戸の場合
 相も変わらずナオヤ。気分が乗らないとテスト用紙も真っ白。考える気がないのだ。しょうがないので放課後残して目の前でやらせる。その日は国語のテスト。一日だけ暖かかったので出てきてしまった粗忽者のてんとうむしが、やっぱり粗忽者の一輪だけ咲いてしまった梅の花と会話をしているお話(もっと言い様はないものか)。暖かかった次の日は寒くて、二人ともくしゃみをしているのだが、梅の花のすぐそばでてんとうむしは赤いえりまきをしてぷるぷるふるえているシーン。問題は 
(どこ    )で、(なに     )をしているのに、
(どんな風に       )ふるえてる 
というのの穴埋め。ぼー…っとしているナオヤをおどしたりなだめたりしながら考えさせる。読めばそのまま文章が書いてあるのに…と思うのは大人の考えらしい。
綾「ほら!ナオヤ! てんとうむし、どこにいるって!?」
ナ「…………(黙って挿絵のてんとうむしを指さす)」
綾「…………………テスト、0点でいい?」
ナ「…………いや。」

 Hさんの場合
 5年生の算数の時間。今日の課題に対する見通しをもたせる。自分達が習ってきた何を使えばいいのか、どうやったら解けそうなのかを意見交流する。手を挙げた男の子を指名すると「わり算」と単語で返答。そこから戦闘開始。
H「何がわり算なんよ?」
 「は? あー。わり算です」
H「だから、何がわり算なのか、ってば。わり算だけじゃ解らないでしょ」
 「オレ」
H「あんたがわり算なん!?」
 「ちーがうって。わり算できます」
H「…何が」
 「オレが」
H「続けて言ってみ」
 「オレがー、わり算、できます」
H「あったりまえよぅ! アンタがわり算できることはみんな知ってる!」
 「あーもー!!何て言えばいいんよ〜!!」
 教室中の子ども達には解っているので、大爆笑だったらしい。「先生、トイレ〜」「先生はトイレじゃありません!」の発展的会話。

 Iさんの場合
 1年生の国語の時間。飼っていた犬が死んでしまったけれど、彼の心は大きく成長して「僕が一番エルフを好きで『ずっと大好きだよ』って言っていたのだからエルフは喜んでいるはずだ」というシーン。1年生どころか6年生相手でも難しい所だが、1年生だからこそ素直にすとんと落ちていくのかもしれない。ところがこのシーンで隣の席の子どもにちょっかいを出して遊んでいたM。いろんな動物たちに囲まれて笑顔の男の子の写真を見ながら質問をしたIさんも怒って「立ちなさい」と立たせる。
I「はい、今先生が質問したことに答えて下さい」
M「…………」
I「…………」
この沈黙が、5分続いた。(Iさんも根性ある)クラス中がしーんとする中、もぞもぞして一生懸命考えていたMがぼそぼそとつぶやく。
M「………かえるが……おる…なぁ」
I「………?」
M「犬も……おるなぁ……」
 どうやら写真に載っている動物を列挙し始めたようなのだが、Iさんも怒るに怒れず収拾をつけるのに大変だったらしい。