後日追記分

 この日の夕方、内示があった。転勤させられるんじゃないか、一体誰が飛ばされるんだろうと職員室に集まってみんなが仕事しながら浮ついている時間である。一定の時間になったら、飛ばされる人は一人ずつ校長室に呼ばれる。そこで自分がどこに転勤になったのか聞かされるのだ。綾戸が一番に呼ばれ、解っていたので「はい♪」なんて明るい返事をしながら後も振り返らずに職員室を出て行く。後でMさんが語った所によると、私が職員室のドアを閉めた瞬間、ざわざわっと空気がどよめいたらしい。まあ、転勤して来て1年目だしねえ…。普通ならあり得ない。事情を知っているのはMさん、Iさん、Wさん、お母ちゃん、お姉さんだけだったので、お父ちゃんはかなり驚いていたようだ。
 綾戸は3月いっぱいで教職員を退職します。結婚して旦那様と一緒に暮らそうと思ったら、広島県から出なければならないのでね。今までずっと黙って内緒にしていたので少々辛かったのだけれど、これでようやく気が晴れた。もう曖昧な返事も適当な言葉もいらない。堂々としていればいい。お子ちゃま達にも盛大にお別れしてもらったことだし、あとは胸を張って出て行けばいい。もちろん、寂しくはあるのだけれど。