母体の苦労

 「動けさぼるな減塩食低カロリー腹八分目!」「一日一時間歩け!」
 …というのが、現在の妊娠女性が言われる合い言葉。昔は「2人分食え」って言われてたらしいんだけどね。最近は食文化が変化してるせいもあるとか。まあ、普通赤ちゃんが3kgくらいで、羊水とか胎盤とか合わせて7kgほどが出産で出て行くんだから、それ以上の体重の増加は確実に自分の身に付いているという理論。「出産して太った」というのはその辺りにある。
 綾戸もそろそろ普段の体重+9くらいになってしまい、デッドラインぎりぎり。帰ってきてから動かない分、太ったしな…。体重がこれ以上増やせないことを母に申告し、野菜を増やしてもらうことにした。両親と3人で食事をして、おかずが1つ2つ残ると「ちびの分の一口を食え」「ちびにやる」と食べさせられていたのだが、それも却下することに。
 理屈は分かっていても何となく理解できていないらしいのが母体になれない父で、綾戸が「お腹空いた…」と悶えていると「カップラーメン食うか?」と言ってくれる。うん、気持ちだけもらう…でも塩分とカロリーが多すぎて食べられません。マンゴーの香りのするハンドクリームを付けて、その香りをかいで「マンゴープリン〜♪食べたつもり〜♪」と遊んでいたら、本気の哀れんだ目で見られた。
「ちびー。お母ちゃんは食べられないんだって。早く出てこい。食わしてやるから」
 うん、ちびもまだ食べられません。