不幸な夜

 このところ、ちびが寝るのは9時過ぎ。それまでもいい加減眠い眠いと騒ぎまくってお風呂に入り、「一杯引っかけて寝なさい」とミルクを飲まされるもちょっと口に含んだだけで限界を迎えて寝てしまい、「飲んでから寝て!」と起こされるような状態。
 ところが、その後暗くして静かにしていないといけなかったのに、昨日の夜は綾戸がどうしてもタイムショックの結末を見たくて、ちびを抱っこして寝かせたままテレビを見ていたのだ。テレビが終わってさあ寝るかという頃にごそごそして起きてしまい、そこから寝室に連れて行かれてしばらく遊んでから寝た。
 眠りが浅くなるとじたばた暴れる癖があるちびだが、また12時半頃じたばたし始めた。このじたばたを押さえ込まないと本当に起きてしまうので、綾戸と綾戸母が両脇から何とか鎮める。ダメな時は抱っこして抱き上げてしばらくゆらゆら。ようやく寝たぞ…と布団におろして綾戸が横たわった瞬間、綾戸母が寝言で「うーん」と結構大きな声でうめいた。びっくりしたのは綾戸だけではない。ちびの身体がびくりと強ばり、目をぱっちり開けて2秒ほど硬直した後、口の両端を下げて「うえええええええええ!」と泣き始めた。口の端を下げて泣くのは本気泣きの証拠。夜中に本気泣きされたことないぞ! 抱っこして必死で鎮める。5分くらいかかってようやく静かになり、寝始めた。綾戸母がおろされたちびの頭をなでながら「ごめんよー」と言ったその瞬間、今度は近くの大きな道路を大音響でバイクが通り過ぎた。
「……(2秒)……うええええええええええええ!!」
 ひいいいぃ(泣)振り出しに戻った…。「ごめんごめん、おうちにはいない暴走族がいたねぇ」とちびをなだめる綾戸の言葉に母が吹き出して、その声でさらに悪化。結局寝るまでに15分くらい、綾戸と綾戸母交代で抱っこしてゆらゆら。
 こういう日もあるんだよね。よしよし。でも一番不幸だったのは、その後すぐに寝付けない綾戸自身だったりする。