小咄ひとつ。

「おぅ八っつぁん、ちょっと聞いとくれよ」

「何だい田子作」

「さっき、子どもに昼ご飯を食べさせるためにうどんを準備しててさ、
 食べる前に薬を飲ませておこうと思って、急いで上の子を取っ捕まえて
 嫌がってたのを仕方なく押さえつけて口に入れたんだよ」

「おぅ、大変だなあ、相変わらずの薬嫌いで」

「そうなんだよ。そうしたら、薬入りゼリーをベェ〜ってするのみならず
 それまでつまんでいたイチゴまで一緒にゲェ〜ってしやがってよ」

「真っ赤な洪水か火山流か…だな…」

「これがまた仰向け状態だったもんで、髪の毛にどばーっと。
 ついでに俺のGパンにもでろーっと。」

「西暦79年の再来か?」

ポンペイほど酷かねぇよ…。Gパンは連日の洗濯だがな。
 しょうがないから慌てて義母に電話して来てもらってよ。
 下の子を見てもらっておいてる間に昼間っからシャワーだぜ」

「豪気だな」

「そうか? ま、見ててもらえたから助かったんだけどよ。
 で、上の子にもう一度薬を突っ込んで、今度は下の子にシロップ飲ませてたら
 でろでろにこぼすんだこれが…眠くて食えねぇらしくてさ。
 自分が摂取したのとよだれかけが摂取したの、どっちが多いかなってほどさ」

「よだれかけが元気にならぁな」

「なってどうすんだよ。
 その後すぐ下の子は寝ちまってよ。上も何とか義母が食わせてくれて
 抱っこしてたらすぐ撃沈しちまったよ」

「疲れてたんだな」

「俺が一番疲れるわ。
 すぐにでも一緒に昼寝したかったんだが、腹も減ったし半分腹いせで
 秘蔵のペヤングスープ焼きそばとかいうやつを食う事にしたんだよ」

「いいじゃねぇか」

「お湯を沸かして、子ども起こさないようにそーっとビニールを開けて
 ふた開けて、かやくを入れて、ふた閉めて、3分待ってる間に台所片付けて」

「待ってる間って結構楽しみだったりするよな」

「おぅよ。
 で、3分経ったから後から入れるスープを入れるのに蓋を開けたんだよ」

「最近、そういうときって『wktk』って言うらしいな」

「そういう言葉を使う歳じゃねえけどな。
 まあ、そんな感じは感じだな。うきうき、か?
 で、蓋開けた後の残念っぷりったらなかったな」

「何でだよ」

「お湯入れ忘れてたからな」

「……相変わらずの天然っぷりだよな」

ちゃんかちゃんかちゃんり〜ん ちゃんちゃ〜ん♪